合同会社を選択する際に留意しておくべきこと

株式会社と合同会社の記事でも述べたとおり、会社を設立する際には、多くの場合、株式会社を選択するか合同会社を選択するかを検討することとなると思います。会社法上はこれに加えて合名会社や合資会社の形態も認められていますが、あまり一般的ではありません。弊社でも、合名会社や合資会社の設立のご依頼を頂戴したことはございません。
株式会社と合同会社の違いとしては、簡単に言えば株式会社は所有と経営の分離が前提となっている(株主と取締役は必ずしも同一ではない)のに対して、合同会社は所有と経営が分離できないことです。
この違いが、合同会社において税務上のデメリットを生じさせる場合があるため、設立の際にはよく検討する必要があります。

合同会社で役員を加えるときの税務

起業の段階では予測できなかったり、予定していないことも多いとは思いますが、会社を運営していく過程で、創業メンバー以外のメンバーを役員に加えるケースは少なくないと考えられます。
優秀な人材と出会い、会社をより大きくするためにその人材を自社に引き入れたい、優秀な人材のため、一般社員ではなく役員待遇で迎え入れたい、ということもあるでしょうし、元々従業員だったメンバーが実績を積んでいき、役員に昇格するということもあると思います。
役員を増員するとき、上述のとおり、株式会社という形態を選択していた場合には株主構成を変えることなく役員を増員することができます。株主総会で選任するだけで取締役に指名することができるためです。
一方で合同会社という形態を選択していた場合には、役員を増員することは会社の資本所有者(株式会社でいう株主)が増えることを意味します。合同会社では出資者は社員と呼ばれ、社員は所有者であると同時に役員にもなるためです。そのため、合同会社において役員を増員すると、同時に出資割合も変動することとなります。出資させずに役員だけに就任させるということは、合同会社においてはできません。
この出資という行為と、それに伴う出資割合の変動が、既存の出資者も含めて税務上の問題を引き起こしてしまう可能性があります。

持分変動の税務

会社の持分の比率(株式会社でいえば持株比率)が変動するということは、それぞれの出資者が所有する持分の価値が変動するということになります。簡単にいうと会社の純資産(資産ー負債)が会社の価値となりますが、それらを出資者が出資比率などで分割して保有している状態で、新たな出資者が参加する場合には、各社員の持分の価値にも変動が生じることとなります。

上図で説明すると、元々合同会社の社員が2名で、会社の純資産が300だった場合には、それぞれの持分は150という状態ですが、そこに社員が1名加わるとそれぞれの持分は100に変わります。これは元々のメンバーから新しいメンバーに50ずつ価値を移転させていることになります。
この際、新たに加わることとなるメンバーが100の出資をすれば税務上の問題は生じないのですが、もしもそれだけの現金を用意することが出来ず、100よりも少ない金額での出資となった場合(合同会社ではこのような参加の方法も認められます)には、既存社員から新社員への贈与のような行為が行われたと税務上みなされ、贈与税が課税されてしまう可能性を検討しなくてはならなくなります。

利益が積み上がっている合同会社は注意が必要

上記の例では会社の純資産に300の価値があるという前提でしたが、この価値が数千万円などになっていた場合には、新たに社員を加えることは実質的に困難になると考えられます。出資額自体を下げて参加してもらうことは可能ですが、そこに対して贈与税が発生してしまうと結局はそれだけの現金を要しなければならなくなるためです。債務超過に陥っている合同会社や、まだ利益が大きく積み上がっていない合同会社であれば大きな現金の心配をせずに社員を新たに迎え入れることが出来るかもしれませんが、設立から利益を大きく積み上げてきた会社ですと、税務上のリスクも検討しなければならなくなります。
この問題は株式会社であれば心配する必要はありません。なぜなら取締役に選任したとしても、同時に株主としての参加をしなければ持分に変動は生じないためです。
上記の合同会社の税務上のリスクを避けるためには、設立後の役員増員を予定している場合には最初から株式会社を選択しておくか、合同会社から株式会社への組織変更をすることが解決策となるかと思います。