会社を設立する際には、
・なぜ起業するのか
・起業して何を目指すのか
を考えることと思いますが、
”何を目指すのか”ということを考えた時に、
もちろん「社会への貢献」や「世の中をより良く」といったこともあると思いますが、
同時に、「上場を目指す」という目標をたてることもあるかと思います。

しかし検討に際しては、上場を目指したらどのようなメリットがあって、それにはどのくらいの時間とコストがかかるのか、を把握しないと検討も難しいという側面があると思います。
本稿では、上場を目指すことのメリットとデメリットについて解説したいと思います。

上場を目指すことのメリット

上場を目指すことのメリットについては、上場会社となることのメリットとは異なる意味合いで説明したいと思います。上場会社として受けられるメリットではなく、上場を目指すということと、上場を目指して色々と準備をする過程で受けられると考えられるメリットになります。上場会社になることによるメリットについては別稿に譲らせて頂きます。

まず、上場準備の過程では、”上場会社”となることを目指して様々な取り組みを行うため、会社の組織がしっかりと設計・構築・運用されるようになるというメリットがあります。一般的な中小企業においては、社長や部長の一存で物事がどんどん進められていくということもあると思いますが、”上場会社”においては基本的にはそのような物事の進め方は認められません(一部、上場会社であってもワンマンで動いているという会社もあるようですが・・)。
誰かの独断で、誰か特定の人物の個人的な損得勘定で会社が動いてしまっては、しっかりとコントロールされた組織ということはできません。投資家からの資金を受けてそれを運用する役目を負う上場会社としては、事業の運営に使う資金は会社の役職員のものではなく、一義的には株主のものとなるため、しっかりとした管理体制のもとで行動する必要があります。
上場審査においてはこのような体制を整えているかどうかがチェックされるため、上場準備の過程で対策を講じた結果として、会社の体制をしっかりとコントロールされたものとすることができます。これによりみんなが誤っていると思っているのに誰も反対をする機会を与えられず、またそれが誰の目にも触れずに勝手に進められてしまうという事態を防ぐことができます。

また、優秀かつ野心にあふれる人材を獲得するチャンスを得られるというメリットも考えられます。
上場準備会社とは、いわば上場会社でもない中小企業の一つであり、加えて通常の中小企業であれば必要のない資金や時間を上場準備のために費やすこととなります。そのため会社の経営基盤としては盤石とはいえず、絶えず資金調達をしていかないと会社の存続が危ぶまれることとなってしまいます。
このような環境下で上場準備をするためには、そもそも上場を目指すためのスキルを持っているということに加えて、リスクを積極的にとる姿勢を持つ人でないとやっていけない可能性が高いと考えられます。
大会社並のリソースも資金も決まりごとも、さらにはネームバリューもない中で、大手との競争に勝ち、上場するための体制構築をしたり資金調達をしたりしないといけないため、大企業で働くことよりも応用問題に対応する能力が必要となります。
IPOに参加することのメリットを理解した上ででも、このような環境に飛び込んで来るメンバーは、間違いなく貴重な人材といえます。上場後にまた次の機会を求めて退職してしまう可能性もありますが、上場までの過程や上場後の会社運営においても、社内に多くのものを残してくれるでしょう。

上記以外にも、社外とのコネクション、投資家からのプレッシャーにさらされることによる成長、会社の知名度向上などメリットは数多くあると考えられます。

上場を目指すことのデメリット

上場を目指すことのデメリットは、上記のメリットと少し関連している部分もあります。
会社の体制を整えることによりしっかりとしたプロセスで会社の意思決定がされるということはメリットでもある一方で、スピード感が損なわれてしまうというデメリットも同時に存在します。また、合議体で物事を決することで常に正しい決断に導かれるわけではないものの、合議や複数人の承認を必要とするということもデメリットに挙げられると思います。それでも、上場を目指すにあたっては承認体制を整えることは必要になるため、上場準備においてはこのような体制を取らざるを得ず、承認体制を取ることの弊害が大きい場合には、上場しないという選択肢を採る必要があるかもしれません。

また、上場準備のデメリットとしては、コストの問題もあります。
上場準備においては、証券会社のコンサルティング、監査法人による会計監査、上場審査に耐えられる能力と知識を持った人材を社内に置くこと、その他体制を整えるためのコストなどが発生し、これらは上場を目指していない会社においては通常発生することのないコストです。
証券会社のコンサルティングとしては数百万円、上場時の成果報酬も含めれば1,000万円を超えると考えられ、監査法人への監査報酬は近年どんどん値上がりしており、数千万円かかることも珍しくありません。人材確保のために人材紹介会社を利用すると、採用の都度、年収理論値の35%程度を支払わなければなりません。内部統制の構築や会社のセキュリティ体制の整備などでもまとまった出費があります。これらのコストと、上場によるリターンを勘案して上場を目指すかを考えるわけですが、必要な支出は決して小さくないということは知っておくべきといえます。

これがデメリットになるかどうかは会社や経営者の考え方次第かもしれませんが、上場審査において予実管理を厳格に見られてしまうということも挙げられます。
新たなマーケットを創出したり、既存のマーケットをガラッと変えるビジネスをしていくベンチャー企業において、予算を作成するのは非常に難しいものです。参考となる情報が限られていたり、ある時点から急激に成長したり、頼りにしていた大手企業からの受注が延期となってしまったり、ということが通常だからです。
そんな中で精度の高い予算を作成することが求められ、実績が予算と乖離している場合にはその分析と対策が求められます。このような縛りを受ける中で、予算を気にせずに必要な軌道修正をしたり、予算にない投資をしたりすることができるかどうかで将来の成長の実現が左右されたりするため、予算のためにチャレンジする機会に制約を受けてしまうというデメリットは十分に考えられます。
このような状況になってしまっているのは、決して審査をする側がベンチャーに理解がないというわけではなく、証券取引市場において投資家が決算予測数値を投資の判断材料としている中ではやはり予算の精度を軽視することができないという事情もあります(それでも、無理難題を言っているということについてもう少し理解してくれるとベンチャー企業の立場としてはありがたいですが。。)。

この他にも、事業の拡大に100%注力できないことや急激に成長したり人員が増加して管理が難しくなることや、大手企業に技術を狙われてしまうなどのデメリットも考えられます。
また社長のデメリットとして会社の財布と自分の財布をある程度自由にコントロールできていたのに、それが許されなくなってしまうというデメリットもあるかもしれません(上場を目指していなくても会社の財布と個人の財布を分けるのは大前提ではありますが)。